高野和明『ジェノサイド』感想 最高
読みました。
うあ~、おもしろかったよ……。最高。
通勤電車に乗っている時間が長いので、電車の中はだいたい読書の時間。
ラストは電車の中でボロボロ泣いた。
上下巻のたった二冊でこんな世界をつくれてしまうのか。
アフリカでの超人類の誕生と、そこに向かう傭兵と、アメリカのホワイトハウス、そして日本人の大学院生。
この全然違う三つの場所が絡み合って、最後にひとつにつながっていくストーリー性がすごい。
アフリカ、アメリカ、日本の三場面が切り替わりながら物語が進んでくれるおかげか、読んでいて飽きがこないし、テンポが良い。
あと、その背景描写がしっかりと描きこまれていて、いったいどれだけの下調べのもとでこの話を書いたんだ……と思わざるを得ない!
下巻の一番最後に参考文献がびっしり。いや、本当にすごいです……。
薬学と人類学と心理学など、たくさんの学問に裏付けられていて、物語の信憑性が増している。フィクションなのに。
どの分野もわたしは詳しくないので、読む人が読んだらもしかしたらツッコミどころがあるかもしれないけど、わたしはマルっと納得してしまうぐらい専門的だった。
そういう知識って読んでてもよくわからないけど、無性にわくわくしてしまう。
例えば、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』はフィールドワークに基づいた人類史で、もちろんノンフィクションなんだけど、この本も結構難しくて読んでてもわからないところの方が多い。
それでも人類の謎を解き明かしていくわくわくがすごかったもんなぁ。
話はまったく違うけど、この感覚がとても似ている。
似ていると言えば、『ジェノサイド』は貴志祐介の『新世界より』に近いSFであった。
『新世界より』は1000年後の未来を描いている話で、知ってはいけない歴史を主人公が解き明かしていくようなSF小説。
謎の生物や真実を解き明かしていく雰囲気が似ているんだけど、『新世界より』はよりファンタジー色が強い感じかな。
わたしは『新世界より』もめちゃくちゃ大好きです。
そして、戦争描写のグロテスクさよ。
タイトルの『ジェノサイド』は『大量虐殺』の意味で、この小説のキーワードとなっていて、コンゴでの戦争の『ジェノサイド』、国による『ジェノサイド』、その残虐さは見たくないのにこわいもの見たさで本を読み進めてしまう。
これ、どこまであり得たことなんでしょうか……。あり得てほしくないよ、ひどすぎる。
こんなひどい戦争の中、超人類と一緒に脱走を試みる傭兵のイェーガー!
ドンパチやっている物語の舞台の反対側で、新薬開発を試みる大学院生。
正反対のことをしているのに、最後にここがつながっていくところがもう最高です。
わたしがいちばん好きで涙したのは、大学院生の研人と、韓国人留学生の正勲のコンビネーション。
ふたりが協力して新薬開発をしていき、ラストのあの展開はもう泣くしかない。
こういう友情と努力ものにわたしは本当に弱い。
ふたりともめちゃくちゃかっこいいです。
こういった成果と、ここまで至る経緯を知った研人が、初めて父親のことを知っていくところなんて、ベタだけど本当に良いですね。
久しぶりに最高のエンターテイメント体験してしまったです。