映画『万引き家族』感想 仕事と教育と、血のつながり
『万引き家族』見てきました。
公式ホームページより
わたしはこの映画を見ながら、『仕事』『教育』『血のつながり』について考えていました。
『仕事』については、妻の信代はクリーニング店で、夫の治は工事現場で、亜紀は女子高生姿で男性客の相手をするお店で、祖母は年金で、それぞれ収入が0というわけではない状況。
それなのにどうしてそんなごく普通に万引きをするような生活になってしまうのか、それが最後まで許せなかったです。
愛情たっぷりのあたたかい家族にみせておいて、でもやってることは万引きだし、それが最後まで悪いとも思っていない様子が見ていてつらい。
低収入になることによって、万引きが常習化し、楽にモノを手に入れられることに慣れてしまい、子どもにそれをさせることすら悪いとも思わなくなる、その生活がとてもこわい。
それがそのまま『教育』につながってくるんだけど、万引きを悪いとも思ってないから、子どもにそのまま教えてしまうし、学校にも行かせない。
これはわたし自身が「万引きはダメ。学校には行かせるもの」という考えで生きているから、この映画の家族を見て引いてしまうんですよね。
「ひどい親だな!」としか思えない。
まぁ親じゃないんですけど、それでもね。
最後に、『血のつながり』のない家族というのがこの映画のメインテーマ。
本当に全員血のつながりがないのに、家族として生活していること、そしてその生活があたたかいものに見えるんだけど、やっぱりもろくて、あっという間に崩れ去ってしまう様子。
「家族に血のつながりなんて関係なくて、大事なのは絆」と言えばとてもきれいなんだけど、やっぱり法律や血で結ばれていない家族は弱くて、映画の前半が『幸せな家族』のように描かれれば描かれるほど不穏な感じ。
「絶対ダメになるやろ……」という伏線がありありと。
今朝、このブログを読みました。
hirokimochizuki.hatenablog.com
このブログ内で「この家族は近代型の自由恋愛」と述べられていて、かなりしっくりきました。
愛情で結ばれ、それはとても強い絆なのに、この上なく危うい。
と、内容についてはそんなところですが、映画全体としてはやっぱりどこかベタな日本映画観がぬぐえていなくて、実はわたしは全然好きな映画ではありませんでした。
最近わたしが見た映画のせいだと思いますが、『百円の恋』『永い言い訳』『そこのみにて光り輝く』など、程度の差はあれども、いわゆる日本の貧困家族を描いた映画は、どれも型にはまった貧困の様子で、既視感がすごい。
あと、美しい家族の様子としての、海でたわむれる家族とかね。
円満な家族の様子を描くとき、どうして海を入れたがるんだろう……。
夏のそうめんと扇風機とかも、「これが日本の風物詩ですよ!」と押し付けられている感じがすごく苦手。
万引きに疑問を持ち始める祥太の様子も、あの家庭であんなに賢くなるもの?と疑問です。
最後の事情聴取の様子もね……。
「家族の言ってることが正しくて、その他の人は外野からその家族を見ているだけで何もわかっていない」ということを押し付けられている感じがダメです。
幸せな家族からの、それがダメになる展開も定型だしね……。
悪い映画とは思わないんだけど、パルムドール賞と言われるとなんで?と正直感じました。すみません。
是枝監督作品は『海街diary』はめちゃくちゃ好きだったんだけどね。
あんまり好きではない『そして父になる』寄りでした。